何度も繰り返す頭痛・肩こり・腰痛にお悩みではありませんか? 薬や湿布、マッサージで一時的に楽になってもまた繰り返す症状に対し、オステオパシーでは痛む場所だけでなく全身のつながりを検査し、本当の原因を見極めて一人ひとりに合わせた施術を行います。

オステオパシーの扉|第1回 オステオパシーとは?

「オステオパシーって、結局何をするものなんですか?」

初めて名前を聞いた方にとって、これは一番自然な疑問だと思います。整体の一種なのか、骨を動かすものなのか、マッサージのようなものなのか。実際には、オステオパシーを一つの手技だけで説明しようとすると、かえって分かりにくくなります。

このシリーズ「オステオパシーの扉」では、難しい専門用語をできるだけ使わず、「なぜ痛いところだけでなく全身を見るのか」「オステオパシーでどのような改善を目指すのか」「実際の施術では何をするのか」「安心して受けるためには何を知っておけばよいのか」を、一つずつお伝えします。

初めまして。理学療法士の蛯原孝洋です。私は長らく筋肉を緩める施術を追究していましたが、ある時、私自身がぎっくり腰と坐骨神経痛に悩まされ、オステオパシーによってその症状が解消しました。この体験をきっかけに、私はオステオパシーを学び始めました。そして実際の施術でも、オステオパシーによって症状が改善していく方を数多く見てきました。だからこそ、その魅力と身体の可能性を、初めての方にもできるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。

オステオパシーは、19世紀のアメリカで体系化されてきた考え方で、身体の一部分だけを見るのではなく、人を一つのまとまりとして捉えながら、構造と働きの関係を考えていくことを大切にします。言い換えると、「ここが痛いから、ここだけを何とかする」という考え方に限定せず、「この人の身体全体では、何が起きているのだろう」と考えるところから始まります。

たとえば肩がつらい方がいたとします。肩そのものに問題がある場合ももちろんあります。しかし肩甲骨の動き、胸郭の動き、首とのつながり、呼吸のしかた、腕を使う習慣などが、肩にかかる負担と関係していることもあります。そこでオステオパシーでは、症状のある場所を無視するのではなく、そこを含めて全体のつながりを見ていきます。

ここで大切なのが、「身体の構造」と「身体の働き」は別々ではない、という考え方です。関節が動く、筋肉が伸び縮みする、呼吸によって胸郭が広がる、血液やリンパが巡る、神経が情報を伝える。私たちの身体では、こうした出来事が同時に起こっています。一つの部分の動きが変われば、ほかの部分が補うこともあります。逆に、長いあいだ補い続けることで、別の場所に負担が集まることもあります。

もう一つ、オステオパシーで大切にされてきたのが、身体には自分の状態を保ち、変化に適応しようとする働きがあるという考え方です。傷ができれば修復が進み、暑ければ汗をかき、体温や血圧、血糖なども一定の範囲に保とうとします。私たちは普段意識していませんが、身体は絶えず調整を続けています。

そのためオステオパシーでは、「施術者が身体を治す」というよりも、まず身体の状態を丁寧に評価し、動きや負担の偏りを見つけ、その人が本来もっている調整の働きが発揮されやすい状態を目指す、という見方をします。もちろん、これは何でも自然に治るという意味ではありません。病気やけがの中には、検査や投薬、手術などの医療が必要なものもあります。オステオパシーは医療の代わりになるものではなく、必要に応じて医療機関と役割を分けて考えることが大切です。

では、施術では何をするのでしょうか。

オステオパシーでは、問診や身体の観察、関節や筋肉、筋膜などの状態の確認を行い、必要に応じて手を使ったさまざまな方法で身体に働きかけます。関節を動かす方法もあれば、筋肉に働きかける方法、非常に穏やかな力で組織の動きを待つような方法もあります。「オステオパシー=ボキボキする施術」でも、「オステオパシー=優しく触るだけの施術」でもありません。その人の状態や目的によって、選ばれる方法は変わります。

そして、オステオパシーで特徴的なのは、手技そのものよりも「なぜそこを見るのか」という考え方です。同じ腰痛でも、全員に同じ場所、同じ施術を行うわけではありません。ある人では股関節の動きが重要かもしれませんし、別の人では胸郭や足部、日常の姿勢や動作が重要かもしれません。症状名ではなく、その人自身を見ようとすることが出発点になります。

ですから、オステオパシーを一言で表すなら、「身体を部分の寄せ集めではなく、一つのつながった存在として捉え、その人の状態に合わせて評価し、手を使って働きかける考え方と実践」と言うと分かりやすいかもしれません。

まず覚えておいていただきたいのは、オステオパシーは特別な一つの技の名前ではない、ということです。身体の見方、考え方、評価のしかた、そして必要な手技を組み合わせた、一つの大きな枠組みです。

もう少し具体的に、オステオパシーの考え方を整理してみましょう。

歴史的には、「身体は一つの単位として働く」「構造と働きは互いに関係する」「身体には自己調整の仕組みがある」「それらを踏まえて合理的に施術を考える」といった原理が大切にされてきました。ただし、これは四つの言葉を覚えればオステオパシーが分かる、という意味ではありません。実際の人の身体に当てはめると、もっと柔軟に考える必要があります。

たとえば、背中が丸いから必ず悪い、骨盤が左右対称でないから必ず症状が出る、ということではありません。身体には個人差がありますし、その人なりの適応があります。見た目の「理想形」に近づけることより、その人が必要な動作を無理なく行えるか、負担が一か所に集中していないか、症状の経過と身体の所見がどう結びつくかを見る方が大切です。

また、オステオパシーでは患者さんを受け身の存在として考えません。施術によって痛みや動きが改善したら、その良い変化を患者さん自身も実感し、日常生活の中で生かしていくことを大切にします。施術者が身体に働きかけることと、本人が新しい身体の使い方を身につけていくこと。その両方が回復につながっていきます。

だから、よいオステオパシーの説明には「何をするか」だけでなく、「なぜそれをするか」「施術後に何を確認するか」が必要です。もし説明を聞いても分からなければ、遠慮なく質問して構いません。オステオパシーは、患者さんにしか分からない秘密の技術である必要はありません。身体について一緒に考えられることも、大切な特徴の一つです。

もう一つ、初めて知る方に伝えておきたいのは、「全身を見る」という言葉の意味です。これは毎回、頭から足まで全部を施術することではありません。症状のある場所を中心に、その動作に関係する範囲を広げて確認し、本当に関係しそうなものを絞っていくという意味です。

例えば膝が痛い人でも、膝そのものに明らかな問題があれば当然そこを重視します。一方、歩くときだけ症状が出るなら、足首や股関節、歩き方を確認する価値があります。「全身だから何でもつながっている」と結論を先に決めるのではなく、実際に確かめることが必要です。

また、オステオパシーは患者さんの価値観も含めて考えます。同じ身体の状態でも、「仕事を休まず過ごしたい人」と「大会に間に合わせたい人」では目標が違います。施術のゴールは施術者が決めた理想的な骨格ではなく、本人が大切にしている生活へ近づくことです。

オステオパシーは、身体全体のつながりを評価し、その方に合わせた手技で不調の改善を目指す考え方と実践です。私がその価値を感じてきた理由を、このシリーズで一つずつお伝えします。

次回は、よく聞かれる「整体・カイロプラクティック・マッサージとは何が違うの?」という疑問を整理していきます。

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