オステオパシーの扉 第7回|オステオパシーでは最初に何をする?
オステオパシーの扉|全18回の目次 / 第7回
初めてオステオパシーを受ける方から、「行ったらいきなり身体を触られるんですか?」「何をされるのか分からなくて少し不安です」と言われることがあります。
当院では、まずお悩みやこれまでの経過を伺い、どこに負担が集まっているかを身体全体から確認します。初回の問診と評価は、その方の改善に向けて施術を組み立てるための大切な時間です。安全面も確認しながら、施術へ進みます。
最初に行うのは問診です。
今、一番困っていることは何なのか。いつから始まったのか。きっかけはあったのか。どのような動きでつらくなり、どのようなときに楽になるのか。症状は一定なのか、時間帯によって変わるのか。こうした基本的な経過を確認します。
ここで大切なのは、単に「腰痛です」「肩こりです」という症状名だけで終わらせないことです。
たとえば同じ腰痛でも、数日前に重い物を持って急に痛くなった人と、何年も前から良くなったり悪くなったりを繰り返している人では、考えるべきことが違います。朝だけ強く痛む人、歩くと痛む人、夜中に痛みで目が覚める人でも、確認すべき内容は変わります。
そのため、これまでの病気やけが、手術歴、服用している薬、過去に受けた検査などを伺うことがあります。
「昔の手術が今の症状の原因です」と決めつけるためではありません。現在の症状を安全に評価するために必要な背景情報だからです。
次に重要なのが、「施術をしてよい状態か」を考えることです。
手技療法で対応するより先に医療機関で評価を受けた方がよい症状があります。突然の激しい痛み、重大な外傷の後、発熱を伴う症状、進行する筋力低下、排尿や排便の異常を伴う神経症状などがあれば、施術より医療を優先する場合があります。
これはオステオパシーとは別の作業ではありません。安全に施術を行うための大切な一部です。
問診の次は、実際に身体を見ていきます。
立った姿勢を見ることもありますが、「姿勢が悪いから症状が出た」と決めつけるためではありません。左右差や身体の使い方、重心のかけ方などを、一つの情報として観察します。
その後、首を回す、腕を上げる、前にかがむ、身体をひねる、しゃがむなど、症状に応じて動いてもらいます。自分で動かしたときにどの方向が動きにくいのか、どこで違和感が出るのか、左右で違いがあるのかを確認します。
必要に応じて、施術者が関節を動かしたり、筋力や感覚、反射などを確認したり、整形外科的な検査を行ったりすることもあります。ここでも、何でもオステオパシー独自の検査だけで判断するわけではありません。安全性や状態の把握のために、一般的な身体検査の考え方も重要です。
そして触診を行います。
関節がどの方向へ動きやすいか。筋肉や筋膜などの組織がどのように緊張しているか。身体を動かしたときにどこが一緒に動き、どこが動きにくいか。こうした情報を手で確認していきます。
触診では、筋肉の緊張や関節の動き、触れたときの身体の反応など、施術を組み立てるための大切な情報を得ます。そこに問診や実際の動作も組み合わせて、身体全体を立体的に評価します。一方、血液検査や画像検査が必要な医学的な問題は、触診だけで判断するものではありません。
ここまでの情報を集めたら、「どこを施術するか」を考えます。
ここで、症状の場所と施術する場所が必ず一致するとは限りません。
たとえば肩を上げたときに肩が痛い人でも、肩関節そのものだけではなく、肩甲骨や胸郭、首などを確認した結果、それらの動きを整えることを優先する場合があります。ただし、離れた場所を見たからといって、そこを自動的に「原因」と呼ぶわけではありません。実際の身体の反応を確認しながら仮説を立てます。
施術を始める前には、何をするのかを説明し、本人が納得していることも大切です。
「この動きが少ないので、ここを少し動かしてみます」「この方法ではこの姿勢になります」「痛みがあったらすぐ教えてください」など、必要な説明を行います。嫌な方法や不安な方法があれば、断って構いません。同意は一度取れば終わりではなく、施術の途中でも変更できます。
施術後には、最初に確認した動作をもう一度行います。
動きやすさは変わったか。症状はどうか。変化がなければ、最初の考え方が違っていた可能性もあります。こうして評価と施術を一方向に進めるのではなく、反応を確認しながら修正していきます。
最後に、必要であれば日常生活や運動について話します。
「次回まで何もせず待ってください」ではなく、今の状態でできること、避けた方がよいこと、少しずつ戻した方がよい活動などを一緒に考えます。もちろん、何でもセルフケアで解決できるわけではないので、状態に応じて内容は変わります。
まとめると、オステオパシーの初回は、
話を聞く
↓
安全性を確認する
↓
身体を観察し、動きを見る
↓
必要な検査と触診を行う
↓
考え方を説明する
↓
同意を得て施術する
↓
もう一度変化を確認する
という流れで考えると分かりやすいと思います。
大切なのは、「ベッドに寝て、施術者に全部任せる時間」ではないということです。患者さんから得られる情報と、身体を実際に見て得られる情報を合わせながら、一緒に現在地を確認していく時間です。
初回をより有意義にするために、患者さん側で準備できることもあります。
まず、症状の経過を完璧にまとめる必要はありませんが、「いつ頃から」「何をすると困る」「何をすると少し楽」「病院で検査を受けたか」の四つが分かるだけでも、かなり役立ちます。画像や検査結果を持っている場合は、内容が分かる資料を持参できると参考になります。お薬手帳も、安全性を考えるうえで重要な情報です。
服装は、身体を動かしやすいものが向いています。施術院によって着替えを用意している場合もありますが、初めてなら事前に確認しておくと安心です。身体のどこを確認する必要があるのか、どこまで着替える必要があるのかも、分からなければ質問して構いません。
そして、初回でぜひ伝えてほしいのが「最終的に何をできるようになりたいか」です。「腰の痛みを10から0にしたい」という数字だけでなく、「30分歩けるようになりたい」「朝、靴下を楽に履きたい」「テニスに戻りたい」のような生活上の目標があると、施術の効果を具体的に評価できます。
初回から、今の身体のどこに負担が集まっているかを確認し、施術前後の反応を確かめながら改善に向けた方針を組み立てます。その場で見えてくる変化に加え、次回までの経過も大切な手がかりです。必要な安全確認を行いながら、毎回の施術をよりその方に合ったものへと調整していきます。
また、施術中に疑問があればその場で聞いてください。「なぜそこを触るのか」「この検査で何を見ているのか」「別の方法はあるのか」。こうした質問に答えることも、初回の大切な役割です。
次回は、その中でも特に不思議に思われやすい「オステオパシーの検査では、いったい何を見ているの?」という疑問を、もう少し詳しく解説します。