何度も繰り返す頭痛・肩こり・腰痛にお悩みではありませんか? 薬や湿布、マッサージで一時的に楽になってもまた繰り返す症状に対し、オステオパシーでは痛む場所だけでなく全身のつながりを検査し、本当の原因を見極めて一人ひとりに合わせた施術を行います。

オステオパシーの扉 第5回|その回復を邪魔するものとは?

オステオパシーの扉|全18回の目次 / 第5回

前回は、私たちの身体には傷ついた組織を修復したり、環境の変化に適応したり、身体の中を一定の状態に保とうとしたりする仕組みがある、という話をしました。

では、その仕組みがあるのに、なぜ不調が長く続くことがあるのでしょうか。

ここで大切なのは、「回復を邪魔する原因が一つある」と考えないことです。実際には、身体の状態、生活、仕事、睡眠、活動量、病気など、いくつもの条件が重なっていることが少なくありません。

まず分かりやすいのが、同じ負担が続いている場合です。

たとえば一日中パソコン作業をしている人が、肩や首に負担を感じているとします。オステオパシーの施術で首や肩が楽になったら、その変化を保ちやすくするために、作業中の姿勢や休憩の取り方も一緒に見直します。長時間同じ姿勢が続く場合は、再び負担が集まらない工夫も大切です。

これは「悪い姿勢だから必ず痛くなる」という意味ではありません。人間の身体はかなりの範囲に適応できます。しかし、同じ動きや同じ姿勢ばかりが長く続き、休憩や動きの変化が少なければ、特定の組織に負担が偏りやすくなります。

反対に、身体を守りすぎることが回復の妨げになる場合もあります。

けがの直後には休むことが必要でも、回復してきた後まで「動かしたら悪くなる」と怖がって全く動かさない状態が長く続けば、筋力や体力が落ち、動くことそのものがつらくなることがあります。回復には「休むこと」と「適切に動くこと」の両方が必要です。そのバランスは時期や状態によって変わります。

睡眠も重要です。

睡眠中には身体と脳でさまざまな調整が行われます。睡眠不足が続くと、疲労感だけでなく、痛みを強く感じやすくなったり、集中力や気分に影響したりすることがあります。私は施術によって身体の緊張や動きの負担を確認しながら、その方の回復を支える睡眠環境についても一緒に考えます。

栄養や生活習慣も無関係ではありません。

身体が組織を修復するには材料が必要です。極端な食事制限や低栄養があれば、回復に影響することがあります。喫煙は血管や組織の治癒に悪影響を与えることが知られています。過度の飲酒や慢性的な運動不足なども、身体全体の健康状態に影響します。

そして、ここで忘れてはいけないのが病気です。

「なかなか治らないのは身体のゆがみが残っているからだ」と決めつけるのは危険です。貧血、糖尿病、感染症、炎症性疾患、神経の病気、骨の病気など、回復しにくさや痛みの背景に医療的な原因が隠れていることがあります。

そのため、施術を続けても想定した変化がないときは、「もっと強い施術をすればいい」と考えるのではなく、そもそもの見立てを見直す必要があります。必要なら医療機関で検査を受けることも大切です。

では、オステオパシーでよく話題になる「身体の動きの制限」はどう考えればよいのでしょうか。

関節や胸郭などの動きが少ない場所があると、動作をするときに別の場所がその分を補うことがあります。たとえば股関節が十分に使えない状態で前屈や立ち上がりを繰り返すと、腰など別の場所が多く働くことがあります。

このような動きの偏りは、身体にとって一つの「条件」になります。ただし、「動きが硬い場所がある=そこが病気の原因」とは限りません。身体は人それぞれ違い、左右差や硬さがあっても症状のない人は大勢います。

だからこそ、オステオパシーでは動きの制限を見つけるだけで終わらず、それが実際の動作や症状とどう関係しているかを確かめることが大切です。

呼吸についても同じです。

呼吸のたびに胸郭や横隔膜は動きます。オステオパシーでは、呼吸に合わせた胸郭の動きや身体の緊張も確認し、負担が集まっている場所を考える手がかりにします。呼吸の浅さだけで病気や治癒力の状態を断定するのではなく、症状や動きと照らし合わせて評価します。

ストレスも、単に「気の持ちよう」と片づけてはいけません。

強いストレスが続けば、睡眠、食欲、筋緊張、活動量などが変わります。痛みへの注意が強くなったり、痛みに対する不安が増えたりすることもあります。身体の問題と心の問題を完全に分けるより、両方が影響し合うものとして考えた方が自然です。

つまり、回復を邪魔するものとは、特別な一つの原因ではありません。

「まだ負荷が大きすぎないか」

「逆に動かなさすぎないか」

「睡眠は足りているか」

「仕事や生活で同じ負担が繰り返されていないか」

「病気を見落としていないか」

「身体の一部がほかの場所を過剰に補っていないか」

こうした条件を一つずつ確認することが大切です。

身体の回復は、施術室の中だけで起こるものではありません。むしろ施術を受けていない時間の方が圧倒的に長いのです。

だからこそ、オステオパシーで身体の負担に働きかけるとともに、活動、休養、睡眠、仕事や運動などの条件を見直すことで、施術によって生まれた改善を生活の中でも生かしていきます。必要な医療との併用も、その方の回復を支える選択肢です。

では、その中でオステオパシーの施術は、どのような役割を担うのでしょうか。

回復を妨げる条件は、大きく三つの視点に分けると整理しやすくなります。

一つ目は、身体そのものにかかっている局所的な負担です。長時間同じ姿勢を続ける、同じ動作を非常に多く繰り返す、ある関節の動きを別の場所で補い続ける、といったことです。

二つ目は、全身の回復に関係する条件です。睡眠不足、栄養状態、喫煙、基礎疾患、体力の低下などです。局所だけに施術しても、全身の条件が大きく崩れていれば回復に時間がかかることがあります。

三つ目は、生活や心理社会的な条件です。仕事を休めない、家族の介護がある、痛みへの不安が強く動けない、反対に仕事上どうしても負荷を減らせない、といった現実があります。

こうしたことを「本人の努力不足」と考えるのは適切ではありません。身体はその人の生活の中にあるからです。

だから、施術者が「この姿勢をやめてください」「もっと寝てください」と言うだけでは解決しないこともあります。変えられるものと変えられないものを一緒に整理し、現実的な範囲で負担を調整する必要があります。

たとえばデスクワークをやめられないなら、仕事を辞めるのではなく、一定時間ごとに立つ、作業姿勢を一つに固定しない、昼休みに少し歩くなど、小さな変更から考えます。育児で抱っこを避けられないなら、抱き方や休むタイミング、周囲の支援を考える方が現実的です。

「回復を邪魔するものを見つける」という言葉は、患者さんの悪い習慣探しではありません。

今の生活の中で、身体が回復しやすくなる余地を探すことだと考えてください。

次回は「オステオパシーはその身体にどう関わる?」をテーマに、施術者が身体のどこに働きかけ、回復や症状の改善をどのように目指すのかをお話しします。

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