オステオパシーの扉 第10回|オステオパシーの施術は痛い? ポキポキする?
オステオパシーの扉|全18回の目次 / 第10回
初めて手技療法を受ける方にとって、「痛い施術をされないだろうか」「首や腰を急にポキッとされないだろうか」という不安はとても自然なものです。
オステオパシーでは、身体の状態や希望に合わせて、穏やかな方法から関節を動かす方法まで選べます。『痛いのが苦手』『ポキポキするのは怖い』という方も、施術前に相談してください。
前回お話ししたように、オステオパシーには多くの方法があります。関節をゆっくり動かす方法、筋肉に軽く力を入れてもらう方法、軟部組織に働きかける方法、非常に穏やかな力で身体を支える方法などがあります。その中の一つとして、条件が合う場合に短く速い力を使う関節への手技が選ばれることがあります。
このとき「ポキッ」「コキッ」という音が出ることがあります。
よく「骨がずれたのを元に戻す音」と思われますが、一般的な関節の音は、関節内の圧の変化に伴う現象として説明されます。音が鳴ったから骨が正しい位置に戻った、音が鳴らなかったから失敗した、という単純なものではありません。
そのため、音を鳴らすこと自体を目標にする必要はありません。
大切なのは、施術前にどの動きが問題になっていて、その手技を何のために使うのか、そして施術後にどう変わったのかです。
では、施術中に痛みが出ることはないのでしょうか。
身体に触れる以上、敏感になっている組織を押したときや、動きにくい方向へ動かしたときに、多少の不快感が出ることはあります。しかし「痛ければ痛いほど効く」という考え方ではありません。
痛みが強すぎると身体が防御的に力を入れ、施術そのものが難しくなることもあります。特に急性期で痛みが強いとき、恐怖心が強いとき、高齢者や骨が弱い方などでは、より穏やかな方法を選ぶことがあります。
一方で、全く刺激を感じない方法だけが安全で、強い方法はすべて危険、という単純な話でもありません。
手技にはそれぞれ適応と注意点があります。大事なのは「この人に、この方法を、今行ってよいのか」を判断することです。
特に首に対する高速の手技などは、利益だけでなくリスクも考え、必要性を慎重に判断し、説明と同意を得る必要があります。まれではあっても重大な有害事象が問題になる領域では、「いつもやっているから」「音が鳴ると効いた感じがするから」という理由だけで行うべきではありません。
安全な施術では、まず問診をします。
骨粗しょう症はないか。大きな外傷はないか。手術歴はないか。血液を固まりにくくする薬を使っていないか。神経症状はないか。発熱や全身状態の変化はないか。こうした情報によって、使える方法は変わります。
そして、施術を受ける本人の希望も重要です。
たとえ医学的に実施可能と判断できる方法でも、「怖いので受けたくない」という人に無理に行う必要はありません。代わりの方法が選べる場合は、その選択肢を説明すればよいのです。
ここで覚えておいてほしいのが、同意は施術院に入った時点で自動的に与えたことにはならない、ということです。
「整体に来たのだから何をされても仕方ない」ではありません。
首を動かすなら何をするのか説明を受ける。服装や触れる場所に不安があれば質問する。途中で痛ければ止めてもらう。一度同意しても、やはり嫌だと思えば途中で断る。これは患者さんにとって当然の権利です。
施術者側も、「このくらい大丈夫でしょう」と勝手に決めるのではなく、患者さんの反応を確認しながら進める必要があります。
では、施術のあとに痛くなることはあるのでしょうか。
手技の種類やその人の状態によっては、一時的にだるさや筋肉痛のような感覚が出ることがあります。ただし、強い痛みが続く、急にしびれや筋力低下が出る、今までになかった激しい頭痛やめまいなど明らかな異常が出た場合には、「好転反応だから我慢すればよい」と決めつけず、状態に応じて医療機関への相談を考えるべきです。
「好転反応」という言葉で、どんな悪化も説明してしまうのは安全とは言えません。
施術後の反応も、良いもの・悪いものを最初から決めつけるのではなく、何が起きたのかを具体的に見る必要があります。
オステオパシーでは、強い刺激から非常に穏やかな刺激まで、幅広い方法があります。
そのため、「オステオパシーを受けたら必ずポキポキされる」という心配は必要ありません。
逆に、「オステオパシーだから絶対にソフトで無痛」と言い切ることもできません。
最も大切なのは、あなたの状態に合った方法が選ばれ、何をするのか説明があり、納得して受けられることです。
もし施術を受ける前に不安があるなら、「ポキポキする施術はありますか?」「私はそれを受けたくないのですが、別の方法はありますか?」と聞いて構いません。
良い施術者であれば、その質問を嫌がる必要はありません。むしろ安全に施術するために必要な情報です。
施術は、我慢比べではありません。
強いほど効くわけでも、音が鳴るほど成功しているわけでもありません。目的に合った方法を、必要な範囲で、安全に行う。それが基本です。
安全性については、施術前だけでなく施術中・施術後まで含めて考えます。
施術中に「少し響く感じがする」程度なのか、「鋭い痛みが走る」のか、「しびれが急に広がる」のかでは意味が違います。患者さんが感じたことを我慢せず伝え、その情報に応じて力を弱める、姿勢を変える、手技を中止することが必要です。
施術後に軽い筋肉痛のような感覚やだるさが出る人はいますが、だからといってどんな悪化も正常とは言えません。痛みが明らかに強まり続ける、新しい神経症状が出る、強いめまいや頭痛など普段と違う症状が出る場合には、状況を確認し、必要なら医療機関で評価を受けることが大切です。
ここで役立つのが、「施術前にどんな反応が起こり得るか」を説明しておくことです。患者さんが後から不安にならないよう、よくある一時的な反応と、連絡や受診を考えた方がよい症状を分けて伝えます。
また、施術方法を選ぶときには利益とリスクを比べます。より穏やかな方法で同じ目的を達成できるなら、あえて強い方法を選ばないこともあります。一方、本人が十分な説明を受け、状態に適しているなら、関節への直接的な手技を選択することもあります。
「先生に任せれば安全」というより、施術者と患者さんの両方が情報を共有しながら安全性を高める、と考えてください。既往歴や薬の情報を伝えること、怖い手技を伝えること、途中で違和感を言うこと。これらは施術の邪魔ではなく、安全な施術をつくるための重要な情報です。
次回は、逆の疑問を取り上げます。「こんなに軽く触るだけで意味があるの?」「強く押さない施術もあるのはなぜ?」という疑問について考えていきます。