オステオパシーの扉 第15回|日本と海外のオステオパシーは同じ?
オステオパシーの扉|全18回の目次 / 第15回
「海外ではオステオパシーはお医者さんなんですよね?」
「日本のオステオパシーも同じ資格なんですか?」
オステオパシーについて調べると、こうした疑問が出てきます。
結論から言うと、同じ「オステオパシー」という言葉を使っていても、資格制度や法的な位置づけは国によってかなり違います。
国ごとの制度を知っておくと、オステオパシーをより安心して選べます。アメリカの医師資格と日本でオステオパシーを行う施術者の資格は同じではありませんが、身体を全体から捉える考え方や施術の学びについて、それぞれの教育背景を確認できます。
オステオパシーは、アメリカの医師A.T.スティルによって19世紀後半に体系化されました。その後、アメリカでは独自の医学教育として発展し、現在のアメリカでD.O.、Doctor of Osteopathic Medicineと呼ばれる人たちは医師です。
アメリカのD.O.は、オステオパシー医学校で医学教育を受け、卒業後に研修を行い、免許を取得します。内科、小児科、救急、外科、精神科など、さまざまな診療科で医師として働いています。薬を処方し、手術を行う資格もあります。
つまり、アメリカのD.O.は「手技療法だけをする専門家」という意味ではありません。
一般的な医学を学ぶ医師であり、その教育の中にオステオパシーの原理や徒手的な評価・治療法が含まれています。実際に臨床でどの程度手技を使うかは、専門分野や医師によって異なります。
一方、イギリスでは制度が違います。
イギリスの「osteopath」は、法律によって登録制度が設けられた医療専門職です。General Osteopathic Council、GOsCという公的な規制機関があり、登録されていない人は「osteopath」という名称を名乗ることができません。
教育や職業上の基準が定められ、登録者には継続的な専門能力の維持も求められています。
ただし、イギリスのosteopathは、アメリカのD.O.と同じ「医師免許」を意味するわけではありません。ここが非常に重要です。
同じ英語圏でも、「osteopathic physician」と「osteopath」で制度が違うのです。
ヨーロッパやオセアニアなどでも、それぞれの国によって状況が異なります。法的に規制されている国もあれば、制度が異なる国もあります。そのため「海外では国家資格です」と一括りにするより、「どの国の制度について話しているのか」を確認する必要があります。
では、日本はどうでしょうか。
日本には現在、「オステオパス」「オステオパシー施術者」という名称そのものを対象とした国家資格制度はありません。そのため、日本ではオステオパシー教育や臨床の基準が、法律によって全国一律に定められているわけではありません。
そのため、日本で「オステオパシーをしています」と名乗っている人の学習背景は同じではありません。
医師、理学療法士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師など日本の医療系国家資格を持ったうえでオステオパシーを学んでいる人もいます。オステオパシーの専門学校や民間教育機関で長期間学んだ人もいます。団体の認定制度を取得している人もいます。
一方で、短いセミナーを受けただけでも「オステオパシー」という言葉を使うこと自体はあり得ます。
つまり、日本では看板の「オステオパシー」という文字だけを見ても、その人がどの程度の教育を受けたかは分かりません。
これはオステオパシーの良し悪しとは別の問題です。
制度が国によって違う以上、利用する側が背景を確認できるようにすることが重要だということです。
「どこでオステオパシーを学んだのか」
「基礎医学をどのように学んだのか」
「何年くらい学んだのか」
「現在も研修を続けているのか」
「日本の医療系国家資格を持っているのか」
「所属団体や認定制度はあるのか」
こうした情報を施術院のホームページで確認したり、直接質問したりして構いません。
ここで特に気をつけたいのが「D.O.」という表記です。
アメリカでD.O.といえば、現在はDoctor of Osteopathic Medicineという医師資格です。しかし国や教育機関の歴史の中では、似た略称やディプロマ表記が使われる場合があり、それがアメリカの医師資格と同じとは限りません。
日本のホームページで「D.O.」という文字を見たら、「アメリカの医師免許を持っている」という意味なのか、どの教育機関が与えた称号なのかを確認した方が誤解がありません。
この違いをきちんと説明することは、オステオパシーの価値を下げるものではありません。
むしろ「海外では医師だから、日本でも医師と同じです」と権威だけを借りるより、日本で自分がどの教育を受け、どの範囲で施術しているのかを正確に示す方が信頼につながります。
オステオパシーは世界に広がる中で、それぞれの国の医療制度に合わせて違う形で発展してきました。
アメリカでは医師。
イギリスでは法律で登録されたosteopath。
日本ではオステオパシーそのものの国家資格制度はなく、施術者の教育背景はさまざま。
この三つを分けて覚えておくだけでも、かなり整理できます。
そして、だからこそ次の疑問が重要になります。
資格の名前だけでは判断しにくい日本で、オステオパシーを学ぶ人は、本来どのようなことを勉強する必要があるのでしょうか。
海外の肩書きを見るときには、もう一つ注意点があります。
「海外の学校を卒業した」「海外の資格を持っている」という説明だけで、その資格が現地でどのような法的権限を持つのかは分かりません。大学の学位、民間団体の認定、継続教育の修了証、法的な免許はそれぞれ別のものです。
たとえば、ある国で数年間の教育課程を修了したことには大きな意味がありますが、それがその国で医師として診療できる免許を意味するとは限りません。逆に、法的な登録制度がある国では、登録者名簿を公的機関で確認できる場合があります。
患者さん側が細かな制度を全部調べる必要はありません。施術者自身が、「私はどの資格を持ち、その資格で何ができ、何はできないのか」を分かりやすく説明しているかを見るだけでも大きな判断材料になります。
日本で活動する以上、日本の法制度の中で何をしているかを明確にすることも大切です。海外で使われる肩書きをそのまま日本の「医師」や医療国家資格と同じように見せると、利用者が誤解する可能性があります。
これはホームページを作る側にも重要な点です。「米国ではD.O.は医師である」という事実を紹介するときには、「したがって日本のオステオパシー施術者も医師と同等」という流れにしないこと。国ごとの制度を分けて説明することが必要です。
制度の違いを正確に知ると、肩書きの豪華さではなく、その人が何を学び、どの範囲で安全に実践しているかを見ることができます。利用者にとっても施術者にとっても、その方が健全です。
次回は、WHOが示した教育のベンチマークなども参考にしながら、「オステオパシーを学ぶ人は何を勉強するの?」をお話しします。