オステオパシーの扉 第18回|初めてオステオパシーを受ける方へ
オステオパシーの扉|全18回の目次 / 第18回
ここまで17回にわたって、オステオパシーとは何か、身体をどう見ているのか、どんな施術があるのか、安全性や資格制度までお話ししてきました。
最後は、これから初めてオステオパシーを受けようとしている方へ、実際の施術でどのように改善を目指すのか、安心して相談するために知っておきたいことをまとめます。
まず、一番大切なことからお伝えします。
オステオパシーを受けるために、難しい知識を覚えてくる必要はありません。
自分の身体の状態を専門用語で説明できなくても大丈夫です。
「右の腰が何となく重い」
「朝起きたときが一番つらい」
「三十分くらい歩くと脚がしびれてくる」
「病院では大きな異常はないと言われたけれど、まだ動きにくい」
こうした日常の言葉で十分です。
施術者が知りたいのは、正しい病名を患者さんに答えてもらうことではなく、「いつから、どんなときに、何に困っているのか」です。
初回では、できればこれまでの経過を思い出しておくと話がスムーズです。
いつ始まったのか。
何かきっかけがあったのか。
これまで病院でどんな検査を受けたのか。
どんな治療を受けたのか。
手術や大きなけがはあったか。
現在飲んでいる薬はあるか。
検査結果やお薬手帳が手元にあれば、必要に応じて持参すると役立つことがあります。
次に、服装です。
身体の動きを見るため、できれば身体を動かしやすい服装が適しています。硬いジーンズや動きを大きく制限する服より、ゆったりした服の方が評価しやすい場合があります。
ただし、服を脱ぐ必要がある場合や身体のデリケートな場所に触れる必要がある場合には、理由の説明と本人の同意が必要です。不安があれば、その場で確認してください。
施術が始まったら、「先生に任せたのだから黙っていなければ」と考えなくて大丈夫です。
痛ければ「痛いです」と言ってください。
怖ければ「その方法は怖いです」と言ってください。
何をしているか分からなければ「今は何を見ていますか?」と聞いてください。
特に首を速く動かすような手技や、自分が苦手な施術については、受けたくないと伝えて構いません。
同意は、一度したら最後まで撤回できないものではありません。
施術途中でも「やっぱりやめたい」と言えます。
また、初回で「あなたの原因はここです」と一つに決まらないこともあります。
身体は複雑です。
問診、動作、触診などからある程度の仮説を立て、それに対して施術を行い、その後の反応を見て考えを修正することがあります。
ですから、「一発で原因を見抜いてもらう」ことだけを期待するより、「自分の身体について一緒に情報を集めていく」と考える方が実際に近いと思います。
施術のあとにも確認してほしいことがあります。
その場で痛みがゼロになったかだけではなく、動きやすさはどうか、立った感じはどうか、翌日はどうか、仕事をした後はどうか。
施術直後に感じる痛みの軽減や動きやすさは、大切な改善の一歩です。その変化が翌日や日常生活でどう続いていくかも、一緒に確認していきます。
逆に、施術後に強い痛みが続く、新しいしびれや筋力低下が出る、今までにない激しい頭痛など明らかな異常がある場合には、「治る途中の好転反応」と自己判断せず、施術者や必要に応じて医療機関へ相談してください。
通院についても、最初から「一生通わなければいけない」と考える必要はありません。
まず現在の状態を確認し、数回の反応を見ます。
改善しているなら間隔を空ける。
自分でできる運動や生活上の工夫を増やす。
変化がないなら、評価や方針を見直す。
必要なら医療機関へ相談する。
こうした出口があることが大切です。
オステオパシーの施術を受けること自体が目的ではありません。
眠れるようになりたい。
仕事を続けたい。
子どもと遊びたい。
スポーツに戻りたい。
長く歩けるようになりたい。
本当の目標は、その人の生活の中にあります。
だから、施術前に「何ができるようになりたいか」を一つ考えておくと、とても役立ちます。
そして、これまでのシリーズで何度もお話ししてきたように、オステオパシーは医療の代わりではありません。
急激な症状、重大な外傷、強い神経症状、発熱や全身状態の悪化など、医療機関での評価を優先すべき場合があります。
良い施術者は、「全部こちらで治します」と囲い込む人ではありません。
必要なときには「これは病院で確認してください」と言える人です。
では、18回を通してオステオパシーを一言でまとめると、何でしょうか。
私はこう考えています。
オステオパシーは、痛い場所だけを機械的に触るための一つの技ではありません。
人の身体を一つのつながりとして見ながら、問診と身体評価によって現在の状態を考え、必要な場合に手を使ったさまざまな方法で働きかけ、その人自身が動き、生活し、回復していくことを支えるための考え方です。
そこには、身体の自己調整を尊重する考えがあります。
同時に、できないことを知り、医療と役割を分ける安全性も必要です。
「全身を見る」ということは、何でも身体のゆがみのせいにすることではありません。
「自然治癒力を大切にする」ということは、病院や薬を否定することではありません。
「手で身体を見る」ということは、触るだけですべての病気が分かるということではありません。
この線引きをしたうえで、一人ひとり違う身体を丁寧に見ていく。それが、このシリーズで伝えたかったオステオパシーの入口です。
ここまでが「オステオパシーの扉」の最初の18回です。
でも、実際に施術を受けると、次の疑問がたくさん出てきます。
「腰が痛いのに、なぜ足を見るの?」
「首がつらいのに、なぜ骨盤を見るの?」
「なぜ呼吸を見るの?」
「なぜ昔のけがや手術について聞くの?」
「なぜ毎回同じ施術をしないの?」
次のシリーズでは、こうした「なぜ?」を一つずつ取り上げます。
オステオパシーを知識として覚えるだけではなく、「なぜその場所を見るのか」が分かると、自分の身体の見方も少し変わってきます。
最後に、初めて受けるときに覚えておくとよい五つの質問をまとめます。
「今、何を問題として考えていますか?」
「なぜこの施術をするのですか?」
「ほかの選択肢はありますか?」
「どんな変化があれば順調と考えますか?」
「変化がなかったら次にどうしますか?」
この五つにきちんと答えてもらえると、自分が何を受けているのかが分かりやすくなります。そして、その答えは毎回同じである必要はありません。身体の状態が変われば、評価や目標も変わります。
オステオパシーでは、施術者が知識と手技を使い、一人ひとりの身体に合わせて改善を目指します。患者さん自身も施術前後や生活の中で身体の変化を確かめながら、一緒により楽に過ごせる状態を育てていきましょう。
分からないことは聞く。嫌なことは断る。必要な医療は利用する。施術による変化は生活の中で確かめる。この四つを覚えておけば、必要以上に構えることなく施術を利用できると思います。
私は、自分自身がオステオパシーによって症状が解消した経験に加え、実際の施術でも多くの方が改善される姿を見てきました。だからこそ、目の前の方の身体が変わっていく可能性を大切にし、一人ひとりに向き合っています。この18回が、オステオパシーを知り、安心して相談していただくための最初の扉になればと思います。